ゆるくまとめてみるPeople Analytics #4 Talent Analytics

marumaru
10 min readFeb 3, 2020

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HRな皆さまこんにちは、marumaruです。しばらく時間があいてしまいました。前3回に引き続き、今回も淡々とUniversity of Pennsylvania WhartonのPeople Analyticsコースの内容を、超ダイジェスト版で綴りたいと思います。最終回です!

毎度の決まり文句ですが、これらの内容はコースの一部であり翻訳も我流なので、あくまでも参考程度にご覧ください。そして何より、実際のコースを受講することを激しくお勧めします!以下、今までの記事です。

最終回である第4回は”Talent Analytics”について。日本語では”Talent Management”を略して”タレマネ”という言葉でよく聞きますが、そもそもTalent Analyticsとは一体なんなのでしょうか。

前回同様、こうすれば全てよし!などの飛び道具はありませんが、注意すべきポイントやアプローチなどをそれぞれ解説しています。実際の講座は内容盛りだくさんなので、この記事では絞ってお伝えしています。

1. Talent Analyticsとは?

まず初めに、Talent Analyticsについて、

・様々な考え方や定義がある

・最近は、タレントアセスメント&デベロップメントという意味で使われることが多い(能力の違いを識別したり、それらの能力を最大限発揮できるような開発を行う)

・パフォーマンス評価よりも深いテーマ(基本的には従業員の評価である)

と言及しています。

講義の中では言及していませんが、Talent Analyticsが活発になったのはWar For Talentという1990年にマッキンゼーアンドカンパニーが出した一つの研究から始まったと言われています。War For Talentの中では、「トップタレントによって市場が変わる」「優秀な管理職をいかにして獲得するかは企業の競争優位をあげる」という話が書かれています。つまり、約30年の時を経て、”Talent”という意味も徐々に変わってきていることがわかります。しかしこのような変化があったとしても、スキルやパーソナリティなどのアセスメント・評価とは異なる内容なので、和製英語の”タレントマネジメント”とは異なることを頭の片隅に置いておいてください。

2. Talent Analyticsにおける4つの課題

Talent Analyticsをする上で、気をつけるべきことは様々です。始める前に以下のことに気をつけましょう。

・データがあることは良いこと、その量が多い方が基本的にはベター。しかしデータがミスリードすることもある。
・もしTalent Analyticsをする場合は、これらすべての数字を噛み砕いて分析する必要がある。例えば、パフォーマンス評価,テストスコア,360度評価,セールスの成績,モラルなど。
・しかし、これらの数字から推論を出す前にいくつかの課題を先に伝えておくことが重要である。

ここでは、その4つの課題を紹介します。

①コンテキスト

パフォーマンス評価などでそれぞれの環境・文脈は無視されがちです。

■気をつけること
・パフォーマンスを個人特性(性格、スキルなど)に過度に帰属させる
・その人の置かれている状況を無視する(簡単なタスクと難しいタスク、助け合える同僚と傷つけ合う同僚、好ましい経済と悪い経済など)

■対策
・各状況で予想されるパフォーマンスの特定をする
・従業員を比較するためにデータを使用する場合、それらを平等にする方法を見つける
・パフォーマンスとは、あくまでチーム、製品、業界、経済、上司などで動くものであり、期待に対する相対的な指標とする

実際にどうやって平等にするのか?というのはかなり難しいですが、アメリカンフットボールでは評価方法として”各状況で予想されるパフォーマンス”を測定・可視化したり、野球では少なくともホームとアウェーでの成績を分けたり、サッカーでもゴールキーパーの成績はチーム・敵別にExpected Goals をスコア化しそこから実際にゴールされた数を引いたNet Goals Savedのスコアで評価するなどをしています。

②相互依存

まず大前提として、私達の仕事の多くは他の人達に依存しています。講義の中では、あるGoogleのエグゼクティブが「個々の貢献を強調しすぎるのは腹が立つ!だってすべての仕事は他の人達一緒にしているし、もしAさんとBさんが会社を去っていたら私だって辞めてる。だって(その2人がいないと)自分の仕事なんてできないもの!」的な発言をしていたという例を出しています。

相互依存を説明するために、「あるところで輝いていたスターを採用しても、別の環境で同様に活躍するかどうか確実ではないこと」Groysberg et al, HBR (2004)を紹介しています。パフォーマンスは、最初の1年で平均46%、スターの在職期間で約20%急落するなどの結果が出ており、研究チームの責任者は「スターアナリストを雇うことは臓器移植に似ている」と言及していまあす。詳しくは以下の記事をご覧ください。

■対策
・パフォーマンスの評価は、多くの場合、グループレベルが最適。
・個々の評価の信頼を高めるためには、通常複数のチームでそれらを確認する必要がある。
・チームのパフォーマンスへの貢献度を評価するためには、Network Analysisなど新しく改善されたパフォーマンス測定が有効である。

まあ、難しいけど確かに気をつけねばですよね。

③自己実現の予言

私達は期待に沿ったパフォーマンスをする傾向があります。期待値が高いとパフォーマンスが向上し、期待値が低いとパフォーマンスも低くなります。かなり昔の研究ですが、講義の中ではマタイ効果を例に挙げています。

1968年に社会学者ロバート・キング・マートンによって提唱されたマタイ効果とは、

条件に恵まれた研究者は優れた業績を挙げることでさらに条件に恵まれるという現象のことであり、それは科学界以外の様々な分野でも見ることができる。「金持ちはより金持ちに、貧乏はより貧乏に」と要約できる。

経験と認識が重要である場合、早期に優位に立つ人(キャリアや教育などで先に期待される人)は時間の経過とともにますます特権になります。

■対策
以下の問いをしましょう。(直訳なのでちょっと変かもです)
・あなたの期待が他人の行動に影響を与える可能性がある場所はどこですか?それとも、彼らの行動の評価ですか?
・これらの期待から評価プロセスを守るには、どのステップを踏む必要がありますか?
・貴重なリソースへの平等なアクセスをどのように確保できますか?

タレントを分析する前に環境としてフェアであることが大切です。

④逆因果関係

通常2つの相関する要因を見ると、一方が他方を引き起こしたと考えようとしてしまいます。特に直感的なイメージがある場合は、更にその仮説に固執してしまいますが、よく見てみると逆の因果関係であることがあります。

ここでは、Aglee tal,Academy of Management(2006)の128人のCEOのカリスマ性と成功を縦断的パネルで研究した事例を用いています。

この研究では「カリスマ的なリーダーはより成功していますか?」という問いを投げています。カリスマ的なCEOはこれ以上成功していないのに対し、成功したCEOはよりカリスマ的であると認識されました。つまりカリスマなリーダーが成功するのではなく、成功するとカリスマ的として認識されているということがわかりました。

また、March & March, ASQ(1977)の一部を引用しています。

規範的な教訓は…私たちがトップマネジメントの成功と失敗について互いに語る物語は、ギャンブルの成功と失敗について語る物語のように、大部分が正義について私たちを安心させ、若者を励ますことを意図したフィクションであるということです。

私自身もこういう書籍を読んだときに、「教訓を守れば成功できるわけではなく、成功者が励ますために教訓を伝えてくれているだけだなあ」とよく思います。もちろん学ぶことは大切ですし、フィクションとしてとても楽しいですし、それらを100冊読んで共通するエッセンスを取るくらいまでしたら尚良ですが、因果関係については注意が必要ですよね。

3.まとめ

以上の内容を簡単におさらいすると、

・Talent Analyticsの意味や考え方は様々であり、時代とともに変化している

・データは大事だが、気をつけるポイントを知っておこう!

・手元にあるタレント関連データのコンテクストを確認すべし

・基本的に個々の貢献は相互に依存している

・最初の期待値に振り回されず平等に評価できているか

・相関関係を都合よく解釈せず、逆の因果関係があることも疑うべし

です。タレントって聞くとスキルとかパーソナリティの分析かな、、、って最初は思っていたのですが、実際ほぼ評価の話になっています。ここではTalent Analyticsとはそれぞれの側面を評価(できるだけ丁寧に理解)していくことなので、ニュアンスの違いを改めて感じました。

あと全体を通して、スポーツアナリティクスの事例が多く、洗練されているので、People Analyticsを学びたければまずはスポーツの事例を沢山見たほうがいいんだろうなと気づきを得ました。

以上、やっとこのシリーズを終えたわけですが、英語の勉強にもなるので、皆さんぜひ実際の講座を受けてみてください。古典的な事例が多いですが、ガイドラインとしてはとても参考になります!

もちろんオンライン講座だけでなくカンファレンスもあります!行きたいですね〜行かれる方々のレポート、楽しみに待っています。

ゆるくまとめた割に意外と大変だったのですが、また何かあればゆるくまとめたいと思います~ではでは!

https://1000logos.net/wharton-logo/

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marumaru

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