ミーティングによってパフォーマンスは上がるのか-【Event Report】people analytics tokyo #5 meeting #patokyo
はじめに
こちらは、2021/12/3に行われたpeople analytics tokyo #5 Meetingについての記事です。ワークショップの分析結果もあるため長めの記事ですが、「群衆の知恵」「集団的知性」についての説明も入っているので興味がある方は是非最後までご覧ください!
people analytics tokyoについて
主催をしているpeople analytics tokyoとは、組織内の人に関する分析に興味のある方に向けたコミュニティです。会社の枠を超えた有意義な情報共有の場となることを目指しています。people analytics tokyo開催の経緯や今までのレポートは、こちらの記事をご覧ください。
今回は、初のワークショップ形式&リアルタイム分析を行ったので、本記事にて結果を共有いたします。勉強会に参加をしてくださった皆様、ありがとうございました!
イベント概要
テーマ
今回のテーマは「Meeting」です。さて、人と協業する上で欠かせない活動であるミーティングですが、そもそもミーティングをする意味はあるのでしょうか。また、最近は1on1などオンラインミーティングの様子を録画・録音し分析するツールもありますが、先ほどの「ミーティングをする意味があるのか(WHY)」に腹落ちをしないと、「どんなミーティングにすればよりパフォーマンスが出せるか(HOW)」を考えることが難しいのはないでしょうか。
したがって今回は、ミーティングの音声や中身だけを分析するのではなく、「個人の考え」vs「複数人の考えをアルゴリズムで集計(群衆の知恵)」vs「複数人で話し合いながら考えを作る(集団的知性)」の3つを比較しながら、どの方法が最もパフォーマンスが高いのかを検証するワークショップを行いました。
タイムテーブル
当日のタイムテーブルは以下の通りです。このイベントは参加側も運営側も重ためな内容でした。しかも金曜夜に、2時間半もかけてストイックな会に参加してくれる方々です。参加者も運営の皆さんも良い人しかいませんでした。今回は、計16名の皆様がワークショップに参加されました。
スピーカーのご紹介
今回、このワークショップの設計・運営・その後の分析など全てのパートについて、鹿内さんと濱田さんがメインで進めてくださいました。
鹿内 学さん(株式会社シンギュレイト)
「信頼」の理論をイノベーションの土台に考えた組織サーベイを提供し、1on1やSlackなど働く人たちのコミュニケーション・データのピープルアナリティクスを手がける。2021年に1on1を通じたイノベーション支援ツール「Ando-san」もリリース。また、各種メディアで次世代型の人事について精力的に発信中。
濱田 大佐さん(関西学院大学)
個々人の意見集約によってより良いパフォーマンスを生み出す「集合知」を対象に研究を行なっている。2020年に合議を必要としない意見集約である「群衆の知恵」と合議を必要とする「集団意思決定」のパフォーマンスを比較した論文(Hamada, Nakayama, & Saiki, 2020)が国際学会誌に採択された。
またスタッフとしても多くの方にご協力いただきました。小泉さんが分析関連を、また、岩本さん、酒井さん、谷口さん、福村さん、御園生さん、伊藤さん、内藤さんにグループワークのファシリテーションなど行っていただきました。
群衆の知恵と集団的知性
今回のワークショップの結果を発表する前に、濱田さんのトーク内容を交えて「群衆の知恵」や「集団的知性」についての補足をします。
まずはじめに、「集団的知性」と「群衆の知恵」は「合議があるか」という軸で分けられます。
また、それぞれ以下のように定義されます。
また、群衆の知恵の適用範囲は広く、専門性を必要とする様々な問題にも応用できる可能性があります。
また、濱田さんはこの「群衆の知恵」に関するご研究をされています。
また、今回のワークショップを行う際にも確信度(自信度)という値をアンケートで取得しました。例えば、あるお題が出されたときに、自信がある場合は高く、そうでない場合は低くつける値です。群衆の知恵のモデルにおいて、その値で重み付けをしてシュミレーションするとどのような効果がでるか、というのが以下のスライドです。
人数(回答数)が多いほど確信度の効果が表れるものの、重み付けはほどほどに、、、ということかもしれません。(何となく実感あり)
また、集団的知性と群衆の知恵は組み合わせることもできます。
その上で、今回のワークショップではグループの話し合いを録音し、そこから「会話時間の均等性」がパフォーマンスにどう影響するのかも見ていきました。
以上が、集団的知性と群衆の知恵について濱田さんからお話いただいた内容です。
ワークショップの内容
ワークショップの流れ
先ほどタイムテーブルの通り、個人ワークを行ったあとにグループワークを行いました。ランキング問題を2–3問、個人で回答した後、グループで話し合い、グループとして回答する、というシンプルなものです。
①個人で答える(回答・自信度)
②グループで話し合って答えを決める(回答・チームへの信頼)
今回はこの問題が丁度良い感じで、難しすぎず簡単すぎずといったところでした。また、グループについても個人差がグループ差に影響しないよう、個人回答の結果をその場で計算し、全グループがほぼ同じくらいの個人回答平均となるようにグループ分けしました。
ワークショップの設計
今回検証する仮説は以下の通りです。回答と実際のランキングの誤差をターゲットに比較を行いました。
ワークショップの結果
まずは今回参加してくださった方々の個人特性として信頼に関する回答です。
個人ワークの結果
まず個人ワークの回答結果より、正解との誤差を並べたチャートです。誤差が少ない左側ほど「パフォーマンスが高い」という解釈です。
ここでは誤差14スコアを取った方が最も成績が良かったということになります。
グループワークの結果
次に、4人1組・計4チームで行ったグループワークの結果です。個人ワークの後、それぞれの答えがある状態で話し合い、チームとしての回答を出してもらいました。
この結果では誤差が少ないルーム3が最もパフォーマンスが高い結果となりました。また全チームとも、個人で最もパフォーマンスが高かった誤差14スコア以下でした。今回の課題に対しては、チームで話し合った方が良い結果に終わりました。
各方法の比較
元々検証したかった4つの方法で、どれが一番パフォーマンスが高かったのでしょうか?各方法は以下の通りです。
・個人:個人の回答平均
・集団的知性:グループワークの回答平均
・群衆の知恵:回答に確信度を入れた濱田先生の群衆の知恵モデル(合議なし)の回答平均
・集団的知性+群衆の知恵:グループワークの回答とチームへの信頼を入れた群衆の知恵モデルで集約した回答平均
今回は、パフォーマンスが高かったのは「集団的知性+群衆の知恵」、次いで「集団的知性の平均」という結果となりました。どちらもミーティングを必要とするので、「ミーティングの効果があった」といえるのではないでしょうか。とても興味深い結果でした。
グループワークにおける会話の均等性
今回はグループワーク時の録音データを解析し、会話の均等性がパフォーマンスに影響するのか?という仮説を検証しました。
最もパフォーマンスの高かったルーム3が、最も均等性が高いという結果です。しかし、次いで均等性の高いルーム2は誤差スコアが高かったので、会話の均等性とパフォーマンスの関係性は何とも言えない結果となりました。
また、今回パフォーマンスの高かったルーム3の会話割合をみてみると、それぞれの会話時間が均等(25%)に近いことがわかります。
メンバーに対する信頼
また、今回「会話の均等性はメンバーに対する信頼で説明できるか」という仮説がありました。しかし、以下の図の通り、あまり関係性が見えるような結果ではありませんでした。
最後に
このように、今回のイベントでは個人・群衆の知恵・集団的知性という異なる方法でパフォーマンスを比較し、更には録音データから集団的知性のパフォーマンスを高める方法の仮説検証まで踏み込みました。今回は16名(4グループ)の参加なので、統計的な有意差として証明はできませんが、非常に興味深い結果を見ることができました。
本イベントに参加してくださった皆様、企画・運営をしてくださった鹿内さん・濱田さん・他スタッフの皆様、本当にありがとうございました。学びや刺激のある時間を過ごすことができました。
引き続きpatokyoでは組織の枠を超えてお互いに学び合えるコミュニティを作っていきたいので、興味ある方は是非Connpassよりフォローをお願いいたします。
ではではみなさま、良いお年を~